2025.11.28
イベント会場のにぎわいをどう切り取る? 動物園を駆け回る、写真撮影インターン
広告やSNSが発達し、すっかり普及した現在。写真や動画を活用したビジュアルは、デジタル・アナログを問わず、あらゆる場面で目に飛び込んできます。
では、それらの広告や投稿はどのように制作されているのか、想像したことはありますか?
今回のインターンでは、デザイナーの助手として学生がイベント撮影に挑戦。広い会場を歩き回り、素材としての画像利用なども想定しながら、家族連れで大盛況のイベント会場にレンズを向けました。
イベントの舞台は、天王寺動物園!
このインターンを募集したのは対話型デザインディレクター/グラフィックデザイナーの豊島夏海さん。ロゴやWebなどのデザインだけでなく、企業や商品の世界観を総合的に表現するブランディングを得意としています。
今回、撮影に入った「動物園で学ぶSDGzoo」はその名の通り、SDGsについて学べる体験コーナーが動物園内に展開するイベント。毎日新聞が主催し、その思いに賛同した企業が、自社の特徴を活かしたコンテンツを企画します。

天王寺動物園だけでなく神戸市立王子動物園、京都市動物園、東武動物公園と、全国で開かれているこのシリーズ。実は豊島さんはブランディング段階からプロジェクトに携わり、関連するさまざまなクリエイティブを手がけています。
詳しくはこちら▼
https://sdgzoo.com/
今回のインターンの仕事内容は、会場の撮影です。場内で繰り広げられる、体験型の学習コンテンツを巡り、来場者やスタッフの様子を捉えます。撮影した写真は、来年以降のWebサイトやSNS、協賛企業向け資料などに活用することを想定しています。
2日間の会期中は豊島さん、さらにプロのカメラマンも撮影に入ります。しかし「自分たちだけでは目の届かないエリアや、気づけないポイントがあるはず」と、アシスタントとしてインターンを募集しました。
募集者
対話型デザインディレクター / グラフィックデザイナー 豊島夏海さん

大阪・関西を拠点に、中小企業の経営者、個人起業家、アーティストのブランディングと制作進行を一貫支援。制作会社で事務経理 / デザイナー/ディレクター/教育担当/役員を経験後、独立。福祉・美術・教育・動物園など社会課題領域を多数ディレクションし、パンフレットやWebを“資産”として機能させる運用まで実装。理念は「個も組織も待ち遠しくなる10年を届ける」。対話を通じて企業やプロジェクトに並走し、グラフィックとブランディングデザインを届けている。
https://eventern.jp/companies/14
「ご家族連れがたくさん来場されるにぎやかなイベントなので、自らその雰囲気を楽しめる人にお願いしたいと思いました。学生さんならではの、来場者に近い視点で撮影してもらえるとうれしいです」
参加者
京都芸術大学 芸術学部 情報デザイン学科 4年 袴田悠友さん

3年生への進級直前に、友人らと京都芸術大学写真サークル「フォトモラ!!」を創設。出身地である静岡県に本社を置くデザイン会社へ就職予定。
「就職先では撮影業務も任される予定です。また、フォトグラファーさんとお仕事をする機会もあると思います。進路が決まっている中でのインターンですが、より実践的な形で学んでみたいと考え、思い切って応募しました」
インターンレポート

集合場所は、天王寺動物園の新世界ゲート。イベントスタッフ用のパスを受け取って入場します。早くも多くの人々が行き交う園内を見学しながら、控え室に移動し、打ち合わせを行いました。
豊島さん自身も撮影を行うため、基本的に袴田さんは単独行動となります。豊島さんからは
シーンや画角のバリエーションを豊富に
記念写真にならないよう、イベントの様子が分かるよう意識して
常設コーナーだけでなく、随時開催されるイベントもカバーできるとベター
といった指示が出されました。「とはいえシンプルに楽しいイベントなので、まずは自分で楽しんで、そのムードを伝えてもらえたら」とのアドバイスも。
袴田さんは少し緊張した様子でしたが、真剣な表情で話を聞き、会場に繰り出しました。

「自ら楽しむ」を実践しながら順調に撮影
京都で暮らしており「天王寺動物園に来るのは初めて」という袴田さん。まずはパンフレットを読み込み、園内に展開された各コーナーの配置や内容を把握します。タイムテーブルも確認し、ワークショップやステージイベントにも備えました。

初めに訪れたのは、協賛企業による「SDGsブース」です。自動車販売、廃棄物処理、エネルギーなど多彩な企業がそれぞれの強みを生かして体験コーナーを設置していました。
袴田さんは早速、各コーナーの担当者にあいさつし、カメラを構えます。これはどういう体験? どんなテーマ? など趣旨を確認しながらアングルを検討しつつ、お客さんにも「イベントの記録写真を撮影しています。撮らせてもらってもいいですか?」と声をかけ、近づいたり離れたりしながらシャッターを切っていました。

「サークルで撮影することは多いけど、写真を専攻しているわけではないのでうまく撮れているか少し心配」と話しながらも、コミュニケーションを取りながら着々と撮影をこなします。
スタンプラリーやステージにも。足を使って見せ場を探す
続いては、屋内会場で行われる「動物園 DE 手話ワークショップ」へ。手や表情での表現を体験し、コミュニケーションの楽しさを体感する企画です。

大きなアクションで、縦横無尽に走り回る子どもたち。どのように撮れば躍動感が伝わるか、と苦心しながらレンズを構えます。「室内と晴れた屋外では、カメラの設定を大きく変える必要があります。こんなにしょっちゅう変える経験はあまりなかったので、大変ですね」。
普段は風景などの撮影が多く、記録写真としての人物撮影はほぼ初めて。加えて、縦横比も1:1の正方形で撮ることが多いそうで、慣れない形での試行錯誤が続きます。ベストショットを逃さないよう、スピード感を意識しながらボタンを操作し、シチュエーションごとに最適な設定を探りました。

動物園ならではの取り組み「どうぶつQuizooスタンプラリー」も外せない撮影スポットです。園内に点在する人気者たちのもとへ足を延ばしました。アムールトラのショウヘイの檻の前には、タイミングよくクイズの挑戦者が。ここでは、すっかり慣れた様子で撮影の説明を済ませ、スタンプを押してもらう子どもたちの姿を写真に収めました。

園内をぐるりと歩きたどり着いたステージでは、まもなく始まるライブの準備中。ここでは、準備していたもう1本のレンズに手早く交換し、ステージとの距離をさまざま試しながら撮影に臨みました。
撮影した写真を豊島さんがチェック
一通りのコンテンツを抑えたところで、豊島さんに連絡し合流。ここまで撮影した写真をチェックしてもらいました。ディスプレイに表示された写真を見た豊島さんは「おっ、楽しそう!」「素敵ですね!」と感想を伝えながら出来を確認。袴田さんは少しほっとした表情を浮かべていました。

データの受け渡しに使うツールや連絡手段など、今後の連携についてのすり合わせも済ませ、再び会場へ。取り逃したコンテンツの追加撮影を行い、動物園を舞台にした1dayインターンは終了となりました。
インターンを終えて
最後に、インターンを募集した豊島さん、参加した袴田さんにそれぞれ感想を聞きました。
豊島さん「新しい表現の写真が加わり、よりパワーアップできそうです」
「私たちだけの撮影では、どうしても見逃してしまう瞬間、表情が多くなってしまいます。そこに加わってもらえる、というのは安心感がありました。実際に、撮ってもらった写真を見ると、動物園ならではの温かい雰囲気を収めながら、普段扱う広告系の写真と異なる表現があり、面白かったです。『お客さんが写り込みすぎず、でも雰囲気が伝わるものを』というリクエストに、真摯に応えてくれたことがよく分かりました。これまで手薄だったアーカイブが充実したことで、次回はもっとパワーアップできそうです! 今後は、インターンの受け入れ期間に幅を持たせたりしながら、学生さん自身が経験してみたいことにも挑戦していただけるような、互いに幸せな企画を考えたいですね」
袴田さん「手探りの撮影でしたが、写真への意欲がより強くなりました」
「インターン自体は参加した経験がありますが、このような内容は初めてで刺激的でした! 学園祭の撮影などを担当したことはありますが、動き回る人を撮り慣れていないので、実験しながら納得のいく撮り方を見つけていった感じです。特に手話のワークショップは、みなさんの躍動感をどう伝えるか悩みました。ステージでのライブも、お客さんを入れながらシンガーやダンサーを撮るのがかなり難しかったです。でも今日1日でたくさんの発見があり、これからデザイン業界で働く身としても『写真についてより深く知りたい!』と思うきっかけになりました」
単なる写真ではなく、デザイン素材としての“その後”を意識して撮影に臨んだ今回のインターン。そこからは、スキルだけでなく撮影対象との向き合い方など、多方面の学びが得られたようです。一方、新たな視点が加わった「SDGzoo」の、今後の情報発信も楽しみです。
「イベンターン」はこれからも、クリエイターと学生の双方に発見がある、有意義な短期インターンを実施・紹介していきます!